学長室だより
平和のための学長メッセージ〜被爆80年に寄せて〜
今年、2025年は、広島(8月6日)・長崎(8月9日)に原爆が投下されてから、ちょうど80年の節目にあたります。人類史上類を見なかった残虐な兵器、核兵器が実戦で用いられてしまったこの両日を、私たちは決して忘れてはならないと思います。いま地球上には、合計1万発を超える核兵器が存在し、その一部を用いるだけで人類を滅亡させるだけの威力となり得ます。核兵器の存在そのものが人類の平和にとって脅威だと言わざるを得ません。
もちろん、平和という概念は多義的であり、核兵器がなければ平和だという訳にはいきません。それでも、核兵器が溢れている現在の状況を、核兵器の根絶された状況と比べれば、後者の方が全人類の平和に対するリスクが遥かに小さいことは間違いないように思います。
2017年に国連総会で採択され、2021年に発効した「核兵器禁止条約(TPNW)」は、現時点で人類が到達した知恵の結晶です。この条約に世界中の国々が集い、この条約を通して核兵器の廃絶に向けた国際的な動きを加速させていくことが、第二の広島・長崎を防ぐための最善の道であると考えます。
今年8月6日、広島市で行われた「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」に私は来賓としてご招待いただき、参列して参りました。式典は、7時50分頃の献水に始まり、8時に開式、原爆死没者名簿奉納、広島市議会議長の式辞、様々な人々による献花、8時15分の黙祷と平和の鐘、広島市長の平和宣言、放鳩、こども代表による平和への誓い、内閣総理大臣・広島県知事・国際連合事務総長によるあいさつと続き、ひろしま平和の歌を参列者全員で合唱して閉式となりました。
式典の様子は毎年テレビを通じて観てきましたが、今回も特に感じたのは、広島市長の平和宣言の力強さと、こども代表による平和への誓いから伝わって来る素直な気持ちでした。それを今回は現地でより身近に体感できたのは、とても貴重な経験でした。
その翌日、8月7日から9日までは、長崎に移動して、「被爆80年・原水爆禁止2025年世界大会 長崎」に参加して参りました。7日の開会総会に続いて、8日には動く分科会・被爆遺構巡りに参加し、爆心地周辺の遺構を巡りながら、鐘楼が川に落下した浦上天主堂、片方だけ残っている鳥居、土台からずれている大学の門柱など、現在にまで残っている原爆被害の痕跡を辿りました。最終日、9日のナガサキデー集会(途中、11時2分には黙祷がありました)は、スケジュールの関係で途中退出となりましたが、核兵器廃絶を目指す雰囲気が会場全体に溢れていました。
今回、初めて広島と長崎の両方を訪れ、異なる形ではあれ、核のない平和な世界を求める多くの声に接したことで、平和への道程はまだまだ遠いとしても、自分なりにこの世界の現状を受け止め、そして自分にできる形で発信していく必要性を感じた4日間となりました。
2025年8月18日
学長 大村 芳昭
学長 大村 芳昭