2020.11.10 (火)INFORMATIONTOPICS法学部法学部

「第14回法学部研究発表会」報告

10月28日(水)、「第14回法学部研究発表会」が開催されました。今年度は新型コロナウイルスの感染を防ぐため、教室ではなくオンライン上での開催となりました。
法学部2名の教員による研究発表が行われました。発表者と題目・発表要旨は以下の通りです。
 

【発表者1】水間 大輔教授

題目:魏晉南朝の不敬罪

 中国の唐律では特に悪質な十種類の犯罪を「十悪」と呼ぶ。十悪のうち、「謀反」・「謀大逆」・「謀叛」は「殺人」・「窃盗」などと同様、罪名でもあるが、「悪逆」以下は罪名ではなく、さまざまな罪名の総称である(以下、これを仮に「罪目」と呼ぶこととする)。
 律疏では、漢代について記した文献にも「不道」・「不敬」の語が見えることから、十悪の起源は漢にあると述べられている。報告者はこれまで秦漢魏晉南朝の「不孝」と「不敬」・「大不敬」について検討してきたが、少なくとも戦国秦~南朝宋の不孝、及び漢代の不敬・大不敬は、いずれも罪目ではなく罪名であることが明らかになった。それでは、魏晉南北朝の不敬・大不敬は罪目と罪名のいずれであったのであろうか。本報告ではこれらのうち、魏晉南朝の不敬・大不敬について検討した。
 漢代の大不敬・不敬は罪目であることの他、主に皇帝やその周囲に対して非礼にあたる行為であることを特徴とする。また、大不敬の法定刑は「棄市」(斬首)であった。不敬の法定刑は判然としないが、情状の軽重に応じていくつかの段階にわかれていたと推測される。魏晉南朝における大不敬・不敬の事例を分析したところ、以上のような漢代の大不敬・不敬と基本的に同じであることが明らかになった。特に、西晉の泰始律では不敬について、「事の軽重に従って法を適用」すると定められており、漢代の不敬の法定刑に対する推測が裏づけられた。
 大不敬あるいは不敬は、遅くとも北斉律・北周律では既に罪目となっていたことがわかっているが、いつから罪目になったのであろうか。今後は五胡十国と北朝における大不敬と不敬について検討するとともに、その罪目化の時期・過程・背景・意義などを明らかにしていきたい。

第14回法学部研究発表01

【発表者2】坂井 亮太講師

題目:問題解決の場に誰を呼ぶべきか ― 熟議の数理モデルの系統的レビュー ―

 会議、審議会、裁判員裁判、ミニ・パブリクス(小集団熟議)など、熟議的な話し合いを通じて集合的な合意形成を図る取り組みが今日多く存在している。そのような、会議の参加者の最適な構成はいかなるものか。
 この問いをめぐって、近年、集合知についての数理モデル研究が進展している。しかし、個別研究の結果がリソースとして蓄積される中で、結果を系統的にまとめ上げる作業は不足してきた。また、数理モデル分析は、歪みや誤りを含みうる複数の数理モデル群から、どのようにして信頼に足るインプリケーションを引き出すことができるのか。従来の研究に欠けてきたのは、複数の数理モデルを活用することで、個々の数理モデル研究に含まれる特異性(モデリングの歪み、誤謬)からの影響を最小化しようという視点である。しかし、蓄積された数理モデルを束ねることで、その信頼性を増す試みは世界的にも未着手となってきた。
 本研究では、「多様性が能力に勝る定理DTA」と呼ばれる熟議の数理モデルを取り上げ、システマティック・レビュー(系統的レビュー)の手法を用いて研究成果を一元的に集約することで、DTAをめぐる集合知の数理モデル研究が全体として何を明らかにしてきたのかを示した。
 特に、DTAのモデル群を対象として試験的にレビューを実施した。データベース検索で得た論文群から抽出された9つのモデルについて体系的なレビューを行った結果、従来の見解とは異なって、専門家と素人の混合熟議の優位性を発見し、提案手法の有効性を示した。これを通じ、モデル分析の信頼性を高め、政策場面や日常生活への応用可能性が拓かれることを示した。

第14回法学部研究発表02

<司会を担当された先生方>

第14回法学部研究発表03

総合司会:水間 大輔教授

第14回法学部研究発表04

 水間先生発表時司会:木村 健登講師

第14回法学部研究発表05

 坂井先生発表時司会:髙村 紳講師
オンライン上での開催でありながら、興味深い研究発表に対し、多くの先生方から質問があり、活発な質疑応答となりました。

第14回法学部研究発表06

<お問い合わせ先>
部署:企画課
電話:04-7183-6517