2022.01.17 (月)TOPICS法学部

「柳井 俊二 国際海洋法裁判所裁判官 オンライン講演会」開催報告

1月11日(火)、法学部 川久保 文紀教授の講義「国際関係論」にて、東洋学園大学国際交流センター(東京都文京区)、北海道文教大学国際学部(北海道恵庭市)と本学の3大学共催による「柳井 俊二 国際海洋法裁判所裁判官オンライン講演会」が開催されました。

柳井先生は1961年に外務省へ入省後、初代の総合外交政策局長、外務事務次官、9.11テロ当時の駐米大使を歴任され、現在は、ドイツのハンブルグにある国際海洋法裁判所(ITLOS)の裁判官(2011年から14年までは日本人初の所長)を務められています。中央大学法学部や同法科大学院では教授として国際法の教鞭をとられたご経歴もあり、日本における海洋法分野の第一人者です。

柳井俊二先生オンライン講演01

柳井俊二先生オンライン講演06

ITLOS議長席(柳井先生スライド資料)

柳井俊二先生オンライン講演07

裁判官たちと(柳井先生スライド資料)
「異文化交流と日本の将来」と題した今回の講演では、学生たちに対して分かりやすい言葉で行っていただきました。古代から現代に至る日本の異文化交流の歴史を、ヨーロッパ諸国やアジア諸国との関係において概観された後、日本外交の最前線で外交交渉を担われてきた長年のご経験の中で、異なる文化的背景をもつ地域・国・人々と相互交流を深めていくことの重要性を語られました。

複数の言語に通じておられる柳井先生は、コミュニケーション手段としての英語実践の重要性と、日本における英語教育の問題点などについても指摘されました。また、日本の学生の海外留学をめぐる過去と現在のデータを示されながら、海外留学する日本の学生が急速に減少している現実に対して、将来を担う日本の若者がもっと世界に飛び立ち、異文化に直接触れることの大切さを説かれました。

柳井俊二先生オンライン講演02

(柳井先生スライド資料)
40枚近くになるスライド資料の中には、北斎や広重の浮世絵、ゴッホやミレーの絵画、日本の会席料理や西洋料理の写真などが多数掲載されており、異文化交流の背景にある様々な素材を提示されていたことも、学生たちの知的好奇心をそそっているようでした。

講演後の質疑応答では多数の学生が質問を行いました。中央学院大学からは、国際関係論を履修している学生と川久保ゼミの学生が、「日本の学生が海外に留学する機会が減っている原因とそれを支える国の施策の在り方についてのお考え」や「日本外交のトップを務められたご経験から現在の日本を取り巻く近隣諸国との関係悪化をどう分析されているのか」という質問を行いました。

柳井俊二先生オンライン講演04

国際関係論の履修学生(4年生)

柳井俊二先生オンライン講演03

川久保ゼミの学生(1年生)
最後に柳井先生からは「国際関係も結局のところ個人と個人の関係がその根本的な基礎にあり、学生時代に人間性や教養を磨いて世界にどんどん目を向けてほしい」という学生たちへのエールが送られました。オペラを趣味とされる柳井先生は、「遊び」の世界に触れることも大切であるとし、「ピアノが今日ここにあればみなさんにぜひ披露したかった」とユーモアをもって述べられ、ご講演を締めくくりました。

講演後、3つの大学の学生たちが自分の言葉で堂々と質問していたことに対して、柳井先生は非常に喜んでおられたとのことでした。また川久保教授は、「柳井先生のご講演を通して我孫子、東京、北海道を結んでの学生交流も成功し、コロナ禍だからこそできることは何かという逆転の発想をもちながら、今後も学生たちにとって意義ある教育活動を行っていきたい」と話していました。
 
<お問い合わせ先>
部署:企画課
電話:04-7183-6517