2023.07.03 (月)TOPICS法学部

アレクセーエフ教授による「平和学」特別講義実施報告

6月26日(月)、法学部の川久保文紀教授が担当する「専門演習Ⅰ」及び「平和学」においてミハイル・アレクセーエフ教授(米国サンディエゴ州立大学政治学部)による特別講演会が実施されました。アレクセーエフ教授は、1963年にウクライナの首都キーウでお生まれになり、幼少時から高校までは旧ソビエト連邦、大学時代はウクライナで過ごされました。

ソ連邦崩壊の直前、クレムリン(ロシア大統領府)駐在の特派員としてその内幕を世界に発信されたことでも知られています。その後渡米され、1996年にワシントン大学で博士号(政治学)を取得されました。ロシア・ウクライナ戦争開始後は、ロサンゼルス・タイムズを中心に戦争の現況を世界中に伝えています。

アレクセーエフ教授 特別講演会実施報告②

ミハイル・アレクセーエフ教授
図書館のラーニングルームで行われた専門演習Ⅰでは、「民主主義のために結集する:ウクライナにおける戦時調査結果」と題して講演されました。
学生たちに対して、分かり易い英語でゆっくりと語り掛ける口調で話されました。ロシアから続くウクライナ各地への攻撃とその被害状況を説明された後に、侵攻開始後、ウクライナの人々による民主主義とそれを支える制度への信頼の度合いが高まっているという現地での調査結果を報告されました。
学生たちはこの特別講演会の前に、ロシア・ウクライナ戦争に関する様々な記事や資料をもとに学習し、英語で質問をつくり当日に備えました。「ロシアが始めた侵攻の真の意図は何か」「戦争からの復興のために最も必要な支援は何であり、日本はどのように支援すればよいのか」などという質問に加えて、「西側からの軍事供与は逆に戦争をエスカレートするだけではないか」という自分の主張を明確に述べた学生もいました。

アレクセーエフ教授 特別講演会実施報告④

アレクセーエフ教授 特別講演会実施報告③

次に、平和学を受講している学生には「ロシア侵攻に抗して:ウクライナにおける戦争、民主主義、社会」と題して講演が行われました。履修者以外の学生も多数参加していました。

冒頭にアレクセーエフ教授から「ロシア・ウクライナ戦争について毎日関心をもって報道をみていますか」という質問が投げかけれ、多くの学生が手を挙げたところから講演が開始されました。ロシアによるウクライナ侵攻が「軍事演習」とみせかけて開始された経緯説明から始まり、「ブチャの虐殺」などを中心として、ロシアによって行われている戦争犯罪について語られました。2014年のロシアによるクリミア併合のときと同じように、ウクライナの国境線が武力で書き変えられようとしている現実についても地図で示しながら述べられました。そのうえで、ウクライナ人による抵抗とレジリエンス(復元力)が、ウクライナ市民としてのアイデンティティ及びEUやNATOに接近するウクライナの地政学的なアイデンティティを強固にしていると、現地での調査結果にもとづき主張されました。

その後、質疑応答に移り、「講演で示されたゼレンスキー大統領という戦争時の指導者に対する国民の支持率が高くなるのは、ある意味当然ではないのか」「冷戦期の二極対立と現在の世界の状況は類似しているようにみえるが、どう考えればよいのか」「ウクライナがロシアに抵抗するのは十分に理解できるが、戦争を早く終結させるためには、政治的妥協が必要ではないのか」などの質問がだされました。アレクセーエフ教授はひとつひとつに対して丁寧にお答えになり、講義終了後も質問のために列を作る多くの学生たちがいました。

最後に、ウクライナに対する日本の支援に感謝していると述べられ、学生たちに対して、日本から遠く離れた国や地域で起こっている出来事に対して強い関心を持って学び続けてほしいというメッセージが伝えられました。

※この特別講演会は、JSPS科研費(課題番号:JP20K01526)の助成を受けて行われました。
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