危機の中にある境界地域

    危機の中にある境界地域とは

    プロジェクト研究「危機の中にある境界地域―稚内・根室・八重山列島を事例として」について

    本プロジェクト研究の目的は、ロシア・ウクライナ戦争による日ロ関係の悪化や東シナ海における地域情勢の不安定化という、いわゆる危機の状況下において、日本の境界地域を取り巻く現状と課題を比較分析することによって国家間関係や地域情勢の悪化の影響を受けるメカニズムを明らかにし、今後の展望と活路を見出すことです。
    研究の概要としては、まず、ロシアとの間で北方領土問題を抱える根室や、かつては日本の領土であったサハリンと海域を隔てて接する稚内がウクライナ危機によってどのような状況に陥っているのかについて考察します。次に、東シナ海における中国の活動拡大や台湾海峡をめぐる地域情勢の緊迫化によって、八重山列島に位置する石垣、竹富、与那国などの境界地域が日本の国家防衛の最前線となっていますが、こうした事態が境界地域に住む人々の生活に対してどのような影響を及ぼしているのかを検証します。そのうえで、各境界地域の現状を比較分析し、生活圏としての境界地域が抱える固有の地域的課題を析出し、領土ナショナリズムを乗り越える方法論的視座を見出していきます。
    本プロジェクト研究の推進は、大学の研究教育における地域連携・社会貢献の位置づけがますます重要視される状況において、地方自治研究に実績のある中央学院大学社会システム研究所と日本の境界地域の地方自治体や他の研究機関との相互連携を深化させる契機になると考えています。
     
    2023年8月
    研究代表 川久保文紀(中央学院大学副学長・法学部教授)