2024.03.21 (木)TOPICS現代教養学部

「第2回現代教養学部研究発表会」開催報告

3月6日(水)、現代教養学部学術委員会主催による「現代教養学部研究発表会」を開催しました。この発表会は、現代教養学部における教育・研究の一層の充実と深化を図ることを目的とするもので、昨年に続き2回目の開催となりました。発表後には質疑応答も活発に行われ、研究の最前線に触れられる有意義な研究発表会となりました。(現代教養学部学術委員会)

【発表者】皆川満寿美 准教授

論題:「現代日本政治とジェンダー平等/男女共同参画――女性活躍推進法をめぐって」

【要旨】
2022年7月、301人以上の労働者のいる一般事業主と全ての特定事業主(省庁と地方公共団体)に対し、「男女間の賃金の差異の公表」が義務づけられた。この政策は、第2次安倍政権が2015年に成立させた女性活躍推進法などによって可能になっているものだが、この報告では、この政策の実現、また、その前提となる女性活躍推進法の成立に関わったアクターたち(官僚、政治家、有識者、市民)の動きを示して、ジェンダー平等/男女共同参画に対して前向きではない日本の政治や行政の中で、それがどのようにして実現されたのかを明らかにした。

2024現代教養学部研究発表会①

皆川 満寿美 准教授
皆川満寿美先生は、詳細な資料とともに女性活躍推進法の成立過程をわかりやすく発表してくださいました。まず、戦後までさかのぼって日本の女性に関する法律を振り返ってから、発表の中心となる女性活躍推進法の成立に至る複雑な経過を、そのときどきに話題となった関係者の発言や記事、エピソード等を交えながら検証されました。男女間賃金格差の解消は企業の自主的取組みだけでは進まず、政治的意思決定によって差異公表が義務化された経緯がよくわかり、「女性の活躍推進企業データベース」の活用法も教えてくださいました。今年も国際女性デーを前に、日本のジェンダーギャップ指数や、男女の賃金格差がニュースで話題になっていたところで、とても良いタイミングでこの問題について考える機会となりました。法や政策の成立には様々な組織や人が関わるため、それら意思決定の場が多様化することの重要性を改めて認識させられました。
 

【発表者】学部長 佐藤寛 教授

論題:「円筒分水って何?」

【要旨】
近年、地球を取りまく環境は厳しく、過去にないほどの気候変動が起こっている。これらの気候変動によって自然界に大きな被害がもたらされている。その中で、水環境問題も大きな課題の一つである。本研究発表は、農業用水に関わる重要テーマである「円筒分水」について、見た事も聞いたこともない方が沢山いる中で、円筒分水とはどのようなものか、誰が何のために造り、いつ頃造られ、何処にあるのか等について、円筒分水の歴史、現状、未来について話を進める。

2024現代教養学部研究発表会⑧

佐藤 寛 教授
長年、水環境問題を研究されてきた佐藤寛先生は、実際にフィールドワークで足を運んで調査された日本全国の様々な円筒分水の写真や取材エピソードを紹介しながら、円筒分水の歴史的重要性と意義を検証されました。発表は、1)円筒分水とは、2)円筒分水の種類(扇形分水、オリフィス型、溢流(いつりゅう)型)、3)全国の円筒分水の現況、4)千葉県内の円筒分水、という順に進みましたが、とりわけ現在でも実際に機能している円筒分水については、動画でも紹介していただきました。水を均等に水田に運ぶ役割の重要性だけでなく、水が流れ出る様子や円筒分水そのものの美しさに、多くの先生方が感動いたしました。質疑応答を通して、佐藤先生が円筒分水に関心を持つようになった子供時代のエピソード(育った地域では実際に水をめぐり争いがあったそうです)や、円筒分水がどのように広まったか、また稲作が盛んな国々のなかでも日本独自のシステムではないか、ということを知ることができました。大学の近くをはじめ、千葉県内にも多数、全国には約100基あるそうなので、いつか実物を見てみたいと思います。
 
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