2021.10.25 (月)INFORMATIONTOPICS法学部法学部

「第15回法学部研究発表会」報告

10月6日(水)、「第15回法学部研究発表会」がオンラインにて開催され、法学部2名の教員による研究発表が行われました。

<小林 敬和 教授>

 日本陸上競技連盟のナショナルチーム強化部長を長く歴任し、日本オリンピック委員会のコーチングディレクターを務めるなど日本の陸上競技の指導制度に長年関わるのみでなく、中国・北京体育大学にある国際陸上競技連盟アジア地域発展センターの特別研究員として国際的にも活躍されています。
 本学では「スポーツ行政論」「キッズスポーツ論」「スポーツ組織論」等の授業を行っています。

第15回法学部研究発表会01

<川久保 文紀 教授>

 現代政治学、国際関係論、平和研究、境界研究(ボーダースタディーズ)を専門に研究し、2019年4月から2020年3月までの1年間を米国のサンディエゴ州立大学政治学部に客員研究員として在籍されました。
 本学では「平和学」「政治学原論」「国際関係論」等の授業を行っています。

第15回法学部研究発表会02

【発表者1】小林 敬和 教授

題目: 国際的なスポーツ組織との連携と研究活動の報告

 本報告は、2019年度サバティカル研修における1年間の研究活動を振り返り、近年の研究テーマである「フィジカルリテラシー」や「動作学習とコントロール」といった分野に関わる今後の研究活動や関連した社会的活動への課題、さらには担当授業での活用などに方向性を示すものであった。
 報告者は、国際陸上競技連盟が2007年から本格的に国際的なコーチ教育認証システムを構築し、直轄機関であるアジア地域発展センター北京(北京体育大学)において1996年から関わった関係で日本人として初の講師資格を取得し、2012年からはアジア地域における上級講師として関係諸国の指導者教育に貢献した。国内では、公益財団法人日本陸上競技連盟において指導者育成部長として我が国の陸上競技指導者養成の統括責任者を2008年から10年、またその間に公益財団法人日本オリンピック委員会ナショナルトレーニングセンターの陸上競技専任コーチングディレクターを2009年から5年務めた実績から、国のスポーツ政策や戦略に多少なりとも関りを持ち続けてきたことも合わせて紹介した。
 特に2019年の研修中は、国際陸上競技連盟の提唱する世界共通の子ども運動プログラムである「キッズアスレティックス」の普及活動に努めた。その中で、公益財団法人東京都公園協会の企画で都立公園のキッズイベント「とうきょうパークスチャレンジ」(計10会場)、公益財団法人東京マラソン財団のスポーツレガシー事業の企画で東京マラソン沿道区の小学校(計5校)、並びに震災復興支援の一環で岩手・宮城・福島の3県の小学校(計9校)で「キッズアスレティックスとうほくキャラバン」など、関係諸団体・組織・行政との協力や連携にリーダーシップを発揮して取り組めた。また、2017年に発足したアジアキッズアスレティックス発展連盟の初代会長に選ばれ、2019年12月に第1回アジアキッズアスレティックス競技大会をマカオで開催したことも大きな成果であった。本拠地の中国はじめタイなど関係諸国にも出向き、また他の地域でも強固な連携を図ろうとする矢先にコロナ禍となり、残念ながら活動が止まったまま現在に至っている。
 こうした国際的かつ国内的なフィールドワークのノウハウや実績が、報告者の担当する法学部スポーツシステムコースの関連科目に反映させることで大学や学生にフィードバックできるのではないかと思われる。また、この2019年から現在までに執筆した上記の活動に関連する研究レポートや教材テキストなども合わせて報告し、研究発表を締めくくった。

<質疑応答の様子>

【発表者2】川久保 文紀 教授

題目:「壁の帝国」アメリカ ー国境を見る視角ー

 本報告の目的は、報告者の研究のこれまでの経緯と2019年度に取得した在外研究をふまえながら、「壁の帝国」としての米国の国境政策の在り方を多面的に考察することであった。報告者はまず、2001年にニューヨークの大学院への留学直後に同時多発テロに現地で遭遇した経験をふまえ、自由や民主主義を標榜する「移民の国」米国において、移民への排斥主義的傾向と同調圧力を強める社会的風潮が蔓延することに強烈な違和感を持ったことが、研究上の大きな転換点になったと述べた。
 そのうえで、米国のサンディエゴを拠点として、メキシコとの国境を中心にフィールド調査に駆け回った在外研究生活を振り返った。おおまかにいえば、ポイントは3つである。第一に、トランプ大統領の誕生によって、メキシコ国境沿いの「国境の壁」(フェンス)が脚光を浴びることになったが、不法移民や麻薬の流入が深刻化する1990年代(民主党のクリントン政権)からすでに国境管理を強化する傾向は強まっていたという歴史的な連続性が認められることである。第二に、「国境の壁」という物理的な障壁を国境沿いに建設することと並行して、テクノロジーを活用した「国境の軍事化」が推進されており、それを背後で支えているのは、民間セキュリティ産業(大半が軍需産業)を中心として形成される「国境産業複合体」であった。つまり、現代では国境がビジネスの最前線として利用されているのである。第三に、「国境の壁」の建設などが進展することによって、移民が砂漠地帯や川などの危険な迂回ルートに向かい、子どもを含めた多数の死者が毎年でており、皮肉なことに、国境越えをサポートするコヨーテ(密入国斡旋業者)などが潤う仕組みができあがっているという事実である。
 なぜ、移民がメキシコや中南米諸国から米国に大量に押し寄せてくるのか。こうした問いに対して、報告者は、莫大な費用や多大な人的犠牲を払う「国境の壁」建設だけに政策の焦点を合わせるのではなく、地域に根付く暴力や貧困の原因を探り、地域全体で国境をマネジメントしていくガバナンスの仕組みづくりが必要であると主張し、報告を締めくくった。

<質疑応答の様子>
<お問い合わせ先>
部署:企画課
電話:04-7183-6517