2019.11.20 (水)INFORMATIONTOPICS法学部法学部TOPページ掲載

「第13回法学部研究発表会」報告

10月30日(水)、「第13回法学部研究発表会」にて法学部2名の教員による研究発表が行われました。
発表者と題目、発表要旨は以下の通りです。

【発表者1】大村 芳昭教授

タイトル:ハーグ子奪取条約と日本

 夫婦関係の悪化や離婚などに伴い、その一方が夫婦の子を国外に連れ出し、または留置する現象が生じているが、国内での連れ出し等と比べて、子の所在の確認や連れ戻し、面会交流の実施などに大きな困難を伴うことが少なくない。
 ハーグ国際私法会議では、子を連れ去り等の直前の常居所地に迅速に返還すること等を通じて、そのような問題に対処することを内容とする国際協力の枠組みを設けるべく、1980年にハーグ子奪取条約を採択した。現在では、ヨーロッパや南米を中心に100カ国が加入している。
 日本では、欧米各国からの様々な働きかけ等を経て、2013年に条約加入の国会承認を得た後、2014年に条約締結を行い、同年から条約及びその実施法が効力を生じている。

法学部研究発表会(大村芳昭先生)

 ハーグ条約は、子の迅速な返還等を実現するため、各国に設置される中央当局による子の返還のための措置と、裁判所(条約上は行政庁でもよい)による子の返還等のための手続の2つの仕組みを採用している。日本では、外務大臣(外務省領事局ハーグ条約室)が中央当局の役割を担い、東京と大阪の家庭裁判所が子の返還のための手続を担っている。
 家裁の手続については、ハーグ条約実施のための特別な手続を新設して、条約の趣旨の実現に努めているが、連れ出した方の親が子の返還を拒絶している場合の強制執行が現実には奏功していない点を指摘され、2018年のアメリカ国務省(アメリカの中央当局)の報告書では「条約の不履行国」に指定された。2019年の法改正により同年の同報告書では不履行国からリストから外されたが、今後の動向については予断を許さない。
 今後、条約の遵守をさらに求められるのみならず、条約の背景にある親子法のあり方自体についても議論が広がる可能性がある。

【発表者2】田中 啓行講師

タイトル:講義を受けている時の大学生の意識 -ノートテイキングとインタビューの分析からー

 大学生が講義を聞いたり、ノートを取ったりする際の問題について、先行研究では、ノート自体の分析や学生に対するインタビュー、質問紙調査が行われている。しかし、書き終わったノートの分析では、講義の重要部分が書かれているかどうかはわかっても、講義のどの部分の理解ができていないかはわからない。一方、質問紙調査に対しては、画一的な内容の回答しか得られないという問題点が指摘されており、インタビュー調査に対しても、学習者の意識に上らないストラテジーが明らかにできないという指摘がある。大学生の講義理解の実態を解明するには、講義視聴中の行動とその時の意識を合わせて分析する必要があるといえる。

法学部研究発表会(田中啓行先生)

 そこで、本発表では、講義を理解する過程の解明を目的に、大学生が取ったノートの筆記過程を記録し、その記録を刺激として見せながらインタビューを行うことによって、講義視聴中の意識をより詳細に分析することを試みた。調査手順は次の①~③の通りである。①筆記過程を記録できるデジタルペンでノートを取りながら講義を視聴する。②視聴後にタスクシートに回答する。③ノートの筆記過程を見ながらインタビューにこたえる。以上の①~③を、約5分と約10分の高齢者福祉の講義、約30分の教育学の講義、約35分の日本語学の講義の計4種について行った。本発表では、②のタスクシートで問うた講義中の用語の意味を適切に書くことができた学生とできなかった学生について、それぞれのノートテイキングとインタビュー内容を比較、分析した。
 その結果、用語の意味を適切に書くことができている学生は、そうでない学生に比べてノートの記述量が多い傾向があった。また、インタビュー内容から、講義を聞いている時の意識に次のような特徴が見られた。①講義者の話を予測しながら、自分なりに構成してノートに書いている。②テーマや用語の説明のために講義者が示した具体例を内容理解に活かしている。
<司会を担当された先生方>

法学部研究発表会(総合司会:水間先生)

総合司会: 水間 大輔教授

法学部研究発表会(司会:三宅先生)

大村先生発表時司会: 三宅 篤子教授

法学部研究発表会(司会:髙村先生)

田中先生発表時司会: 髙村 紳講師
興味深い研究発表に対し多くの先生方から質問があり、活発な質疑応答となりました。
<お問い合わせ先>
部署:企画課
電話:04-7183-6517